ドイツのど真ん中!

ドイツのど真ん中、ゲッティンゲンやアイヒスフェルトを紹介しています。

ひとつの小さなパン(あるドイツ人捕虜の詩)

8月、日本は戦争について考えさせられる時期です。15日の終戦記念日でした。

1945年8月15日に日本はポツダム宣言を受諾し、第2次世界大戦(太平洋戦争)は終結しました。しかし、満州などには8月15日以降も戦い続けた日本兵や戦火に逃げ惑う日本人がいました。特にソビエトの捕虜となった日本兵のシベリア抑留は過酷を極め、飢えと強制労働により多くの人が亡くなりました。

こうしたシベリア抑留は日本人に限ったことではありませんでした。多くのドイツ兵や軍属もソ連の捕虜となりました。

ゲッティンゲンの近くにあるエーバーゲッツェン(Ebergötzen)にあるヨーロッパ・パン博物館では、ソ連の捕虜となったヘルベルト・ヴェーゲナー(Herbert Wegener)というドイツ人が1946年にパンについて書いた詩の葉書が売られています。その詩を訳してみましょう。

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ひとつの小さなパン

ひとつの小さなパン、お前はそれが何を意味するか知っている!

以前ならば、ハムとバターをのせて、

毎日のようにテーブルに出されたパンを思い出しただろう。

お前は深く考えもせずにそれを手に取った。

ひと切れのパンはお前にとってどんな物だっただろう?

しかし今や、パンはお前にとって神様からの恵みとなった。

苦しみの中ではじめてその意味を学んだのだ。

ひとつの小さなパン、今やお前は感謝の眼差しで手に取る。

ひとつの小さなパンがお前を幸せにすることだってできるのだ。

お前は農民たちを尊敬し、

畑に麦の穂が実り、

夏の風に優美になびくのをふたたび見るだろう。

そうして神様の全能を知るのだ。

それは愛しいパン、大地の黄金だ!

ひとつの小さなパン、もう一度家に帰れたならば、

お前は二度と忘れてはならない。

祈りとともにパンを食べたこと、

どれだけ神聖な物だったかを。

お前が静かに誓ったことを守り続けよ。

幸福にあっても常に苦しい時を思い出せ。

お前の子供に幼いうちから手を合わせ祈ることを教えよ、

「神よ、我らに日々のパンを与え給え!」と。

 

ヘルベルト・ヴェーゲナーという人がどんな人物だったのか、インターネットで調べても実のところよく分かりません。おそらくナチス時代の詩作の好きな一ドイツ兵だったのではないでしょうか。ドイツ語のオリジナルの詩はABABCDCDの形で見事に韻を踏んでいます。 過酷な捕虜の状態でこのような見事な詩を作ったことに感動をおぼえました。

エーバーゲッツェンのヨーロッパ・パン博物館を次回訪れたら、ヴェーゲナーとこの詩について質問してみようと思います。

ヨーロッパ・パン博物館はドイツのここにあります。

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