ドイツのど真ん中!

ドイツのど真ん中、ゲッティンゲンやアイヒスフェルトを紹介しています。

ゼーブルク湖の伝説

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ゼーブルク湖と麦畑、背景の山並みはハルツ山地(2019年6月)

コロナ禍で昨年はドイツに行くことが叶わず、今年もまだドイツに出かけるのは時期尚早かなと思っています。

さて、私にはドイツのど真ん中に行くと必ず立ち寄る場所がいくつかあります。その一つがゼーブルガー・ゼー(Seeburger See)こと、ゼーブルグ湖です。ドイツのど真ん中の「アイヒスフェルト(Eichsfeld)の瞳」とも呼ばれるこの湖はゲッティンゲンから車で30分ほどで行くことができるゲッティンゲン市民や近くの村の人たちの憩いの場です。

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ゼーブルク湖でボートを楽しむ人々(2017年7月)

このゼーブルク湖にはある伝説があります。

現在湖がある場所には、かつて立派な城があったのだとか。その城にはイザングという名の伯爵が住んでいました。イザング伯爵は神をも恐れぬ乱暴者でした。

ある日、伯爵は召使いに命令し、漁師にウナギを取って来させました。しかし、イザング伯爵に届けられたのはウナギでななく、白銀色した蛇でした。動物の言葉が少し分かる伯爵はこの蛇を食べると動物の言葉を話せる力を手に入れられることを知っており、白銀の蛇を自分の食べたいだけ食べて、残しました。そして召使いには絶対食べてはならない、と言いつけました。しか、召使いはその命令を守ることができず、残りを食べてしまいました。

蛇を食べてしばらくすると、伯爵の心にこれまで犯してきた罪の数々が不意に降りかかり、恐れ慄かずにはいられなくなり、急に地獄の業火に焼かれたように体が熱くなりました。そして鶏、鴨、ガチョウが上へ下へと逃げはじめ、伯爵の罪について話しはじめ、雀と鳩が「まもなく塔は崩れ、城は沈む」と言い出したのです。伯爵は蛇を食べた召使いに「鶏は何を叫んでいるのか」と聞き、「命が助かりたかったら、日が沈む前に逃げろと言っています」と召使いは答えました。イザング伯爵は召使いに「この嘘つきめ」と言い、召使いは城の中へと逃げ込みました。

それから伯爵が馬に跨ると、そこに再び召使いが現れて「私も連れていってほしい」と頼みました。伯爵たちがギーボルデハウゼン近くの丘までやってくると、自分の城の塔が夕日に照らされているのが見え、すべてが嘘のように思えたのです。しかし突然、地面が揺れるのを感じ、馬で先に進みました。改めて周りの見回すと、城の塔も壁も全てなくなり、城のあった場所に湖ができていました。それから、助かったイザング伯爵は心を入れ替えたのだとか。

この伝説はグリム兄弟の「ドイツ伝説集(Deutsche Sagen)」に収められています。ドイツ語を読める方はこちらで読むことができます。

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ゼーブルク湖と馬(2018年11月)

因みに、現在ゼーブルク湖畔には、 グラーフ・イザングGraf Isang:イザング伯爵)というレストランがあります。高級な感じがするので、これまで食事をしたことはありませんが、またドイツに行けるようになったら、一度食事をしてみたいものです。

ゼーブルク湖はドイツのここにあります。

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