ドイツのど真ん中!

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ALDI (アルディ)の話


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今年の夏、ALDI(アルディ)についての本を翻訳して欲しいというご依頼を受けて、3ヶ月半かけて約350ページのドイツ語の本を翻訳していました。

ALDIとは、ドイツで生活したことのある人ならば、かなりの確率でお世話になったことのあるディスカウントスーパーマーケットのことです。私もゲッティンゲンに住んでいた時にはたびたび買い物をしていましたし、ドイツに行くたびに今でも買い物しています。売っている商品はとにかく安くて、よく利用していたにもかかわらず、これまでALDIというディスカウントスーパーについてほとんど知らずにいました。

ALDI という店名も元々は、Albrecht Discount(アルブレヒトディスカウント) を略したもので、創業者がアルブレヒト兄弟だということを今回の翻訳を通して知りました。そして1971年には、弟のテオ・アルブレヒトが誘拐され、700万マルクの身代金と引き換えに17日後に解放されるというショッキングな事件も起きたのだそうです。

私が1990年代後半から2000年代前半にゲッティンゲン大学に在学していた頃、道路を挟んでキャンパスの向かいにALDIがありました。店内には装飾など一切なく、商品は梱包の段ボール箱開封したままに積まれており、店員も愛想が滅法悪いのだけれど、その代わりに品物はめちゃめちゃ安くて貧乏学生としては大いに助かりました。しかし、それは創業者のアルブレヒト兄弟によるアイデアで、戦後の奇跡の経済復興期に拡大し、今やドイツ全土はおろか、ヨーロッパ各国やアメリカ、さらには中国にまで進出しています。

ALDIはテレビやラジオでCMを流すようなこともしませんでした。宣伝に金をかけるくらいなら商品の値段を安くするためでした。しかし、2010年にかつて誘拐された弟のテオ・アルブレヒトが死去し、2014年には兄のカール・アルブレヒトも死去し、ALDIも変わってきているようで、2010年代の後半からは映画館やテレビでCMを流すようになっています。上の動画は「Götter(神々)」というタイトルの、全能の神が地上のALDIで買い物をするストーリーで映画館で流されたコミカルなALDIのCMです。

この夏、翻訳した本はALDIを通してドイツの近代史を振り返るという、なかなか興味深い内容で、この本を翻訳できたことはとても貴重な体験になりました(ただし書籍化の予定はありません)。