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ビヨンド・サイレンス Jenseits der Stille

「ビヨンド・サイレンス」の日本版とドイツ語の原作本

今から10年以上も前に故郷の図書館に行き、ドイツ文学の本棚でたまたま手に取り、借り出したのが「ビヨンド・サイレンス」(カロリーヌ・リンク、平野卿子訳、集英社という小説でした。読みはじめてみると、物語の世界にぐいぐいと引き込まれて、一気に読了。心を揺さぶられるストーリーにいつかドイツ語でも読んでみたいと思うようになりました。

コロナ禍がはじまる前年の2019年にゲッティンゲンに滞在した際にドイツ語版の "Jenseits der Stille" を購入し、原語で少しずつ読み進めて、先週末にようやく読み終えることができました。

「ビヨンド・サイレンス(Jenseits der Stille)」は日本語に訳すと、文字通り「静寂の向こう側」という意味になります。

主人公のララは聴覚障害者の両親の元に生まれました。障害のない彼女は8歳にして両親と社会をつなぐ“通訳”を完璧にこなすようになっていました。クリスマスに父の妹である叔母からクラリネットをプレゼントされ、音楽の世界に触れました。成長したララはクラリネットの才能が花開き、ベルリンの音楽大学を志すようになります。一方で耳の聞こえない父との関係は悪化していくのです。音のない世界で劣等感やコンプレックスを抱えながら生きてきた父と音楽の世界で生きていこうと決意した娘、相反する親子の和解はとても感動的でした。

映画「ビヨンド・サイレンス」の日本版DVD

「ビヨンド・サイレンス」は作者のカロリーヌ・リンクが自ら監督し映画にもなっています。数年前に私は中古のDVDを手に入れることができました。(フランス映画の「エール」、そのハリウッド版リメイク作「コーダ あいのうた」のアイデアには、「ビヨンド・サイレンス」が下敷きになっているのではないかと私は個人的に思っていたりします。2022年11月9日加筆)

図書館や古書店などで「ビヨンド・サイレンス」を見かけたら、本を読んでみたり、DVDを鑑賞したりしてみてはいかがでしょうか。私も先日、日本語版の「ビヨンド・サイレンス」をインターネットの古書店で改めて買い求めました。