皆さんは ティル・オイレンシュピーゲル(Till Eurenspiegel)という人物をご存知でしょうか。クラシック音楽に詳しい方ならば、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を聴いたことがあることでしょう。
このティル・オイレンシュピーゲルはドイツを中心にヨーロッパを放浪し、行った先々で色々な仕事に就きながらいたずらをしまくります。それもどうやら14世紀のドイツに実在した人物だったらしいのです。彼のやったいたずらの多くは排泄物のうんこが付き物。そのいたずらの数々は『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』という民衆本にまとめられ、現代まで読み継がれてきました。
このブログで以前に紹介したビールのふるさとアインベック(Einbeck)の街にもティル・オイレンシュピーゲルは2度訪れて悪さを働いているのです。
そのいたずらがビールの醸造所に職人の見習いとして雇われたという話。醸造所の親方が婚礼に呼ばれて、留守の間に同僚の下女と二人だけで仕事をすることになります。そのうちに下女がダンスに出かけることになり、ホップを煮ておくようにとオイレンシュピーゲルは言いつけられます。そしてここぞとばかりにいたずらをするのです。事もあろうに、ビールに欠かせないホップではなく、親が飼っているホップという名前の犬を煮てしまったのです。
ビールの街ならではのお話ですが、特産のビールにとんでもないいたずらを働いた男の像と噴水を街の真ん中に作ったアインベックの人たちの寛大さに感心してしまいますね。
アインベックでのティル・オイレンシュピーゲルのもう一つのいたずらですが、これはうんこ話。市場にすももを売りに行くお百姓さんの荷馬車に乗せてもらい、すももの上にうんこをして、売り物にならなくしてしまうといういたずらです。
少し前に日本では小学生向けの『うんこドリル』が大ヒットしましたが、中世ドイツの民衆もうんこ話が大好きだったのかもしれませんね。
ティル・オイレンシュピーゲルは北ドイツのメルン(Mölln)でペストにかかって死んだとされています。メルンの街にはティル・オイレンシュピーゲルの像があります。またニーダーザクセン州のブラウンシュヴァイク(Braunschweig)にも噴水があるようです。『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』を読み直して、彼の足跡を辿る旅をしてみるのも面白いかもしれません。
『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』の日本語訳は岩波文庫でも手に入ります。
アインベックのマルクト市場とティル・オイレンシュピーゲルの噴水はここにあります。