ドイツのど真ん中!

ドイツのど真ん中、ゲッティンゲンやアイヒスフェルトを紹介しています。

ひとつの小さなパン ドイツ人捕虜の詩をもう一度 

今回のブログは以前2019年にも紹介したものです。

thosomich.hatenablog.com

日本では戦争について考えさせられる8月。そしてウクライナでは今も戦争が続いており、ロシアによる戦争犯罪や人権侵害が伝えられています。

ドイツのど真ん中ゲッティンゲンから東へ山を一つ越えていくと、エーバーゲッツェン(Ebergötzen)という小さな町があり、そこにヨーロッパ・パン博物館があります。その博物館ではパンにまつわる詩の葉書が売られていました。『ひとつの小さなパン(EIN STÜCKCHEN BROT) 』という題で、ヘルベルト・ヴェーゲナーというソ連の捕虜となった兵士が1946年に書いた詩です。

ヘルベルト・ヴェーゲナーというドイツ人の捕虜が書いた詩を記したポストカード

 

ひとつの小さなパン

 

ひとつの小さなパン、お前はそれが何を意味するか知っている!

かつてのお前ならば、ハムとバターをのせて、

毎日のようにテーブルに出されたパンを思い出しただろう。

お前は深く考えもせずにそれを手に取った。

ひと切れのパンはお前にとってどんな物だっただろう?

しかし今や、パンはお前にとって神様からの恵みとなった。

苦しみの中ではじめてその意味を学んだのだ。

ひとつの小さなパン、今やお前は感謝の眼差しで手に取る。

ひとつの小さなパンがお前を幸せにすることだってできるのだ。

お前は農民たちを尊敬し、

畑に麦の穂が実り、

夏の風に優美になびくのをふたたび見るだろう。

そうして神様の全能を知るのだ。

それは愛しいパン、大地の黄金だ!

ひとつの小さなパン、もう一度家に帰れたならば、

お前は二度と忘れてはならない。

祈りとともにパンを食べたこと、

どれだけ神聖な物だったかを。

お前が静かに誓ったことを守り続けよ。

幸福にあっても常に苦しい時を思い出せ。

お前の子供に幼いうちから手を合わせ祈ることを教えよ、

「神よ、我らに日々のパンを与え給え!」と。

ソ連の捕虜収容所でどのようなことがあったのか、一切記述はありませんが、捕虜としての過酷な生活が容易にうかがえる詩です。たったひとつの小さなパンがどれほどありがたい物に思えたことか。

ソ連の捕虜となった日本軍の兵士もシベリア抑留がいかに苦しい思いをしたかが今に伝えられています。大した食事も与えられずに過酷な強制労働をさせられており、この詩を書いたヴェーゲナーというドイツ人と同じ体験をしたことでしょう。

そしてロシアに連れ去られたウクライナの人たちのことを思えば、ロシアという国がソ連の時代からほとんど何も変わっていないことに暗澹たる気持ちにさせられます。ウクライナの戦争が1日も早く終わることを願わずにはいられません。